


南門から境内に入ると白木の鳥居が目に入る。その奥に小祠が建っている。これが「元宮」である。
よく知られているように,靖国神社の前身は,幕末の動乱で倒れた朝廷方の死者を祀る東京招魂社(明治二年創立)である。
ところが,東京招魂社創立の数年前,文久二年(1862)と同三年(1863)に,福羽美静(ふくば びせい,
ふくば よししず;国学に傾倒した津和野藩士)らが京都某所でひそかに招魂儀礼を実施し,小祠を建てた。招魂儀礼の対象は,桜田門事件や坂下門事件などで倒れた倒幕派の志士であった。
この小祠を,昭和六年(1931)に京都から靖国神社の境内に遷したのが,この「元宮」である。
事実関係からすると,幕末に津和野藩士によって建てられた京都の招魂社は,靖国神社の前身の東京招魂社とはなんのかかわりもない。また京都招魂社の祠が靖国神社境内に遷されたのは,昭和になってからである。
思うに,靖国神社は,津和野藩士の建てた招魂社を,朝廷方の戦死者を慰霊した東京招魂社の「思想的源流」とみなしているのであろう。
(東京都千代田区九段北三丁目)
2006.9.24