
川合神社は,JR羽越本線の中条駅の東南東10キロメートル,リゾート地としてにぎわう胎内(たいない)地域の入り口に鎮座する。鹿ノ俣川(かのまたがわ)と胎内川が合流する岬状の場所である。宮久集落の裏手であるが,地籍は「熱田坂」である。
「延喜式」所載の「川合(カハアヒ)神社」(沼垂郡五座の一)ではないかと考えられている。
(1キロメートルほど下流の熱田坂集落内に鎮座する神明宮を,また新潟市沼垂東の乙子神社を「式内・川合神社」とする文献もある。)
社地の横を通る県道は,スキー場やリゾートホテルに出入りする人で常ににぎわうが,鬱蒼とした社叢の奥の社殿に気づく人はまれである。

祭神については諸説がある。『越後風土記節解』は「多奇波世(タカハセ)君」とし,『神名帳考證』もまた「多奇波世公」とするが,『越後野志』は当社を「熊野大明神」とする。
『越後國式内神社考』は「祭神は與止比咩命(ヨドヒメ,神功皇后の妹神)と水分神で,相殿熊野神」という村人の伝承を紹介している。水神信仰との関係が深いことをうかがわせる。
また『神社明細帳』は,熊野加夫呂岐櫛御気野(クマヌカブロギクシミケヌ)神が主祭神で,さらに多奇波世神,湍津姫(タギツヒメ)神を配す,とする。熊野加夫呂岐櫛御気野命は,島根県の熊野大社の祭神である。
現在の祭神は,伊弉冉尊,事解男命,速玉男命とされる。これは,紀伊の熊野神社系の神々である。
今,拝殿には「熊野山」の額がかけられている。


往古この地に渡し場があったことや社地の地形的特徴から考えて,水の神に対する土着の信仰がこの地の祭祀の起源であろう。後世になって熊野信仰等との関連が模索されたために祭神に混乱が生じたのではなかろうか。
なお村史によると,この神社の最寄りの集落である宮久に熊野神社があり,祭神を櫛御気野命と天照皇大神とするという。当社との関係は不明。
(新潟県胎内市熱田坂663)
2004.5.2