新潟県神社探訪

八幡宮(五泉市矢津〈やづ〉)

村松町矢津の八幡宮

旧村松町矢津の八幡宮は,廃線となった蒲原鉄道村松駅の東2キロメートルに東向きに鎮座する。往古より菅名荘の総鎮守として崇敬が篤かった。明治六年(1873)には村社に列せられた。
「神社明細帳」(明治十六年)に「中蒲原郡矢津村字八幡林 村社 八幡宮」とある。
祭神は息長足比賣尊,誉田別尊,玉依比賣命で,創立は平城天皇の御代(806-809)とも伝える古社である。
天喜五年(1057),奥州の反乱を征伐する源義家が戦勝祈願したとの伝承もある。

明治四十一年(1908),字諏訪林の諏訪神社(健御名方命),字伊右衛門屋敷の十二神社(大山祇命),字中原の神明宮(豊受姫命),字上ゲンの若宮八幡宮(大雀尊,素盞嗚尊)を合併。
同四十二年(1909)に横渡の十二神社(大山祇命)を合併。
四十五年(1912)に熊沢の熊野社(伊邪那美尊)を合併した。
大正元年(1912)に笹目の十二神社(大山祇命)と下杉川の十二神社(大山祇命)を,同二年(1913)に矢津川下の旗立神社(誉田別尊),松野の若宮神社(大鷦鷯尊,大山祇命),石曽根村字馬場の若宮八幡宮を,同四年(1915)に笹目の赤城神社(磐筒男命,磐筒女命)を合併した。
矢津の八幡宮拝殿矢津八幡宮拝殿側面
拝殿は安政五年(1858)の作とされる。

矢津八幡宮本殿八幡宮本殿
拝殿の背後に離れて建つ本殿は寛文元年(1661)に村松藩主の寄進によって建てられたもので,江戸初期の様式をよく残すという。村松町の有形文化財の指定を受けている(昭和61年)。
なお「明細帳」は境内神社として事平神社(大己貴命,倉稲魂命,素盞嗚尊)と赤子柗神社(磐長比賣命)を記録している。

八幡宮南側鳥居
境内南側にも鳥居がある。

『越後式内神社案内』(藤原武重,1782年)は当社を「延喜式」の「長瀬神社」(蒲原郡十三座のうち)に当てている。また『越後国式内神社考』(小池内広)や『越後野志』(小田島允武)も,一説として同じ見解を紹介している。しかし現在,当社の紹介に「式内・長瀬神社」の件に触れたものは見当たらない。

(新潟県五泉市矢津1896,蒲原鉄道バス村松駅から徒歩30分)
2005.5.4


旧 村松町(川内地区)神社