大分神社探訪

奈多宮(杵築市奈多〈なだ〉)

奈多宮鳥居
奈多宮(なだぐう)は,八幡奈多宮(はちまんなだぐう),奈多八幡(なだはちまん)ともよばれ,国東半島の南東端,大分空港の南南西6キロメートルに鎮座する。
創立の時期は不明であるが,起源はこの地の氏神であろう。
伝承では,比売大神が奈多沖の市杵島に示現したという。また宇佐神宮創立の五年後,天平元年(729)の創立と伝え,宇佐神宮との結びつきが強い。
祭神は比売大神,応神天皇,神功皇后の三柱で,宇佐神宮と同じである。
かつて宇佐神宮では,定期的に御神体が新造されたが,その際,旧御神体は宇佐神宮の下宮に遷され,次の新造では下宮の御神体が奈多宮に遷されるならわしであった。
今,当社は平安時代の八幡三神坐像(僧形八幡神像,神功皇后像,比売大神像)を収蔵し,いずれも国の重要文化財に指定されている。
奈多宮市杵島
当社の沖の岩礁が,最初に比売大神が祀られた旧社地(市杵島)である。
奈多宮参道奈多宮鳥居額束
奈多宮拝殿奈多宮社殿屋根
奈多宮本殿
回廊の中に八幡造の本殿と北辰社が並ぶが,見にくい。
奈多宮参道
参道は海岸からまっすぐに続いている。

ところで,天平勝宝六年(754),宇佐神宮の神職である大神田麻呂(おおがのたまろ)が,薬師寺の僧と共謀して呪詛を行った罪で配流となる事件(厭魅〈えんみ〉)事件)が起きた。この不祥事により,八幡大神は宇佐の地を嫌い,海を渡って伊予宇和島に遷った(愛媛県八幡浜市の八幡神社)。
宇佐の地に八幡大神が不在となって十年以上が経過した天平神護元年(765),神託があり,八幡大神がここ奈多浜から上陸して宇佐の大尾山の新造社殿(現在の大尾神社の地)に帰座することとなった。
この年は,皇位をうかがう道鏡が太政大臣禅師に任じられ権勢を手にした年である。この状況に危機感を抱いて八幡大神が帰座したのであろうか。

(大分県杵築市奈多)
2017.11.13


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